■コスティキャンのゲーム論・解説

●「ゲーム」には、参加者が必要である

 「そもそもゲームとはなんなのか?」の、最後の項目です。



 コスティキャンは言います。

 ゲームには参加者が必要である…。

 これはゲームの特性です。



 コスティキャンがいう伝統的な芸術である絵画・映画・テレビ・演劇・小説、
これらに相対する人は受動的でよく、自動的に(もしくは単純な作業を手動で
することで)「楽しむための流れ」が進んでいきます。


 プレイヤーは何も考えなくてもよく、ただ展開を見守るか、「送る」だけで
よいのです。

 参加は必要なく、見ているだけでいい。


 与えられる展開を受け取り、客観的な視点で解釈し、そして感情を刺激され
る。

 客観的であり、受動的であるのが、単方向(ナラティブ)メディアの特徴で
す。



 これに対して、双方向(インタラクティブ)のメディアがあります。



 インターネットは、こちらから情報を送れば、それに対応する情報が返って
くるという意味で、双方向性を持っています。


 ゲームも、能動的にプレイヤーがパッドやボタンで情報を送らないと「楽し
むための流れ」が展開していきませんから、双方向性を持っていると言えます。

 主観的であり、能動的なのが、双方向メディアの特徴です。


 双方向メディアでこちらから情報を送るということは、「なにか返って来る
のを期待する」わけですから、情報を送るモチベーション(動機)が存在しま
すね。


 さてここで質問なのですが、


「あなたはなにを期待してゲームをしますか?」


 インターネットに期待するのは、仕事や趣味の情報、商品の情報、コミュニ
ケーションのための情報など、利便性のともなう情報であることが多いと思い
ます。


 それに対してゲームにはどんな情報を期待するのか?


 私が思うにそれは、


「感情を動かされる情報」


だと思います。


 つまり、プレイヤーはゲームに「感情を動かされる」ことを期待しているん
です。


 日常生活では味わえない、感情が伴う事柄…興奮、驚き、恐怖、緊張、感動…
これをプレイヤーは期待しているんですね。

(エンターテインメントとは、とどのつまり感情を動かす情報を総合的に扱う
ジャンルだと言えます)


 もちろんインターネットにも感情を動かす情報はたくさんあります。


 このおかげで、別にゲームで感情を動かされなくとも、インターネットで充
分じゃないか…ということになって、ゲーム離れが進んだと思うのですが、そ
れは今は置いておいて…。


 双方向メディアであり、かつ自分の感情を動かされるのを動機に情報を送る…
ちょっと無味乾燥ですが(笑)、ゲームはそういう定義にくくることができると
思います。


 まとめると以下のようになります。


▼単方向メディア

・情報・知財:
 実用書

・エンターテインメント(感情を動かすのが目的):
 絵画、映画、テレビ、演劇、小説

▼双方向メディア

・情報・知財:
 アプリケーションソフトウェア、インターネット

・エンターテインメント(感情を動かすのが目的):
 ゲーム



 さてコスティキャンは、映画や小説とゲームの違いとして、非常に重みのあ
る言葉を残しています。



「ゲームはルールの集合体を提供する。そして、プレーヤーがそれらを
使って自分自身のプレイを創造してゆく」



 プレイヤーが自分自身のプレイを創造してゆく。


 なんとも深い言葉です。


 あらかじめ用意された道すじを「なぞる」のではなく、その場その場でプレ
イヤーが判断してプレイを「創る」のがゲームである、ということですね。




 そしてさらにコスティキャンはこう言います。



「これはJohn Cage の音楽作法に似ている。彼は、完全な楽譜ではなく、
テーマだけを作曲する。演奏家は、このテーマをもとに、即興で演奏しな
ければならない。」


「ゲームデザイナーもテーマだけを作る。プレイするのはプレーヤーである。
これこそ、民主主義の時代にふさわしい民主的な芸術形態であろう」




 これは、ゲームデザイナーは世界法則だけを作り、実際にそこで判断・行動
するのはプレイヤーである、と言い換えてもいいでしょう。



    →伝統的な芸術形態は、受身の聴衆に対して与えられる。
     ゲームは、積極的な参加者を求める。


(続く)

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