pyoyさんが、ゲーム音楽のお仕事について語ります。

ゲームコンポーサーの仕事

 ゲームのしくみの新田です。

 今回はゲームサウンドコンポーサーのPyoy(ぴおい)さんに、
お仕事について語ってもらえる機会を得ることができました。

 ゲームコンポーサーの仕事についての語りは、ウェブ上では珍しいのでは
ないでしょうか?

 これから、ゲームコンポーサーという職業、ゲームサウンドのお仕事につきたい人、
もしくは今ついているという人は、ぜひ参考にしてくださいね!


■ゲームサウンドコンポーサーという仕事について

第1回 「序文とお仕事についての概要」
第2回 「最近のこの仕事の人種の傾向と広がりについて(日本版)」
第3回 「現実的に必要なスキル」
第4回 「現場の悩み」
第5回 「結局、将来性ってあるの?食べていけるの?



第1回 『序文とお仕事についての概要』





●はじめまして


 はじめまして。都内某所でゲームの音楽の作曲を中心に仕事をしている
pyoy(ぴおい)という者です。


 今回、ゲームの音楽の作家という仕事についての記事を書かせて頂くこと
になりました。

 一見わかりやすそうでありつつも実状の見えずらいこのお仕事…。

 実際どうなのよ?っていう最近の現状を自分なりに切り込みつつ
紹介してみようと思います。


 よろしくお願いいたします。


 今回お話しする内容は、ゲームの音楽の作曲のお仕事に特化した内容です。

 ゲームの音の部分のお仕事は、非常に多岐にわたりますが、作曲はその中の
一部にしか過ぎません。

 しかし非常に重要な仕事であります。

 そして、各社そのお仕事の枠や適応範囲、立ち位置、様式には非常に大きな
隔たりがあるのが現実ですが、はたして、

 「ゲーム音楽の作曲が例えば小説やマンガの作家のようにソレ自体を仕事と
して成立しうるものか。」

という、わかり易くありつつも、業界の実状を考えるとわりと極端な
バックボーンでお話してしまおうと思います。


 コレを読まれる方の中には、「これからゲームの音楽の曲が書きたい」と
漠然と志望している人もいるかもしれないし、「自分は、音楽畑ですでに
活動しているが、でもゲーム関係の音楽のお仕事って今一どうなんだろーな」
という既に実績&実力をある程度、お持ちの方もいるかもしれません。

誰にとっても、ある程度の距離感で参考になるように行きたいと
思いますので、それぞれの距離感は読者の皆さんご自身が計りながら
読んでみてください。


 ちなみに自分はといえば、最初は理系出身のプログラマーとしてゲーム業界に
入ってきた者で、一度大きく方向転換をする時期を経て今は作家をやっている
30代です。さまざまなジャンルのゲームを手がけております。


●どんなお仕事なの?

 簡単に言ってしまえば、ゲームのいろいろな場面で再生される音楽を
作る仕事です。

いろいろな種類のゲームのいろいろな場面に、それぞれに合わせた手段、
表現手法を用いて、調整をかさねつつ、完成させていくお仕事です。


わたしの作業部屋。その1
 スタンスとしては、レコード会社と契約しているような完全なアーティストと違い、いろいろな、お仕事をこなせる事が極力望ましいのですが、それぞれの仕事を平凡にこなしてしまってもまずい仕事なので、汎用性と個性と完成度が常にせめぎあう所でのバランス感、それとある程度のスピードが要求されます。

 複数ジャンルへの適応力の高さとそういう
行為をする中でも失われない作家性のようなものを持ち合わせる
(小説家がいろいろなテーマを題材にしても常に人気作家は人気作家としての
クオリティーを維持していくように…。)、また、そういった事へのチャレンジを
楽しいと思える気持ちで取り組める人に適性がある職種かなと思います。

 実際ゲームの音楽の製作するお仕事は、ゲーム音楽に特化した作家よりも
それら周辺の音楽業界との絡みで担当される機会を得たアーティストの
ような人々や、ゲームサウンドクリエイターとして、会社に勤務し、
もろもろの業務をこなしつつ隙間で何とかこなす例も多く、自分のような
ゲームの仕事を中心に活動を展開している人間は、かなりの少数派なのかも
しれません。つまり、現在実にいろいろな業種の方々がいろいろな関わり方を
しているお仕事でもあると言えます。


●必要な雑務的スキル

 その他、実際の一個人の雑務的なスキルとして、PCや電子音楽機材などの
デジタルメディアの知識をかなり要求されるので、ある程度問題なくそういった
機材が使える必要もあります。
(仕事に余裕が無い時に無用なテクノストレスにさらされることもしばしば…です。(汗))

 時にはプログラム出来ないといけないことだってあるのです。

 PC環境やデジタルメディアを積極的に味方につけるか
単なるトラップと見なすかは人それぞれですが、しばしばテクノロジーに長けた
人が非常に高度でクリエイティブな仕事をしてしまうこともあり一筋縄では
語れない問題も含んでいます。ソレ相応の有名人になってしまえば、ある程度
人に任せられたりできるのですけどね…。


●職種的認知度は?

 社会的に職種としても認知されているものでもないし、それゆえに、自分のような「他の何でもなくゲームの音楽がやりたい」という動機で音楽的な研鑽をつんでどのようにそういった仕事とめぐり合い、つなげていくかという事の真相は闇の中、闇の中と言うよりも、典型例などが存在しないゆえに語りづらいものがあります。

 ただ、印象としては非常に漫画家やイラスト

わたしの作業部屋。その2(主観視点)
レーターに近い感じで一人での地道に努力と活動が少しずつ実を結んでいく感じがありまして、音楽であること以前に、純粋な創作活動を大事にしつつ
世の中とつながっていくために、(独りよがりにならない)バランス感や
コンスタントな積み重ねをチャンスにつなげるようなイメージが
比較的理想的なのかなと思います。


●自分はどうやってもぐりこんだか

 ここからは理想とはほど遠い現実的なサバイバル感満載な話となります。
多くの人とは多分異なる道筋かもしれませんが、ひょっとしたら、十人十色
なのかもです…。

 それでまず、自分の場合は、とにかく$のイイ、大手のゲーム会社の
サウンドクリエイターの職を最初は志しました。(出来れば社員でなく
契約社員で。)

 製作機材を整えつつ、クリエイティブな現場を学び、ゲーム製作全体の
大きな仕事の流れの中でのサウンドの仕事の関わり方、知りたいと思った
からですが、「社会人を一度は経験しとけ!」という学生時代お世話に
なった先生の助言にも手助けされています。

 ですが、まぁコレのまずい所は、新入社員の分際ではじめから


「やめようと思っている」


ところでw、実際会社に入ってしまうと中々心苦しいものがありました。


もとがとれない機材の数々…。
自分の仕事が自分の手に負えないうちからやめようと思っているわけで、逆に仕事にやり甲斐がでてき始めると残りたくもなってくるし、ガッチリと堅実に実務を遂行している人にも申し訳ない…。$もいいのに何故辞める必要があるのかというジレンマもありました。

幸か不幸か、部署再編成の際に間違えて送られてきた退職手続きメールを逆手にとり所属部長と
 面談して、その9ヵ月後ぐらいに退社しました。
(延べ2年ぐらいいただろうか…。)

 その期間に会社で自分が学べたと思うことは以下の三点です。


 ・電気信号としての音。それらにまつわる諸問題。

 ・ローエンドからハイエンドまでプロ機材がどういう場面でどのように
  使われているか。

 ・物事がどういうペースで進むか。どういうものがうまく行き、
  どういうものがうまく行かないか。


 どれも大事なことだと思うのですが、とりわけ、現実的な時間感覚の
中でのクリエイティビティーとはどの程度のものか、どういったテンポで
対応できる事が理想的なのかが自分なりにわかるという事が重要でした。

(後々物を作る側と発注をかける側の温度差などを理解する上でも非常に
役に立ったと思います。)


 その後は、スタンスをハッキリさせるためにも、

「作曲家をするために活動中なので長くは居られません。」


という意思表示をしつつスポット参戦的に小さなゲーム会社で働きつつ
人脈もひろがり、(ですが辞めるのはまた大変でした…。)裏で作っていた
デモテープが功を奏し、そのうちとある音楽製作プロダクションから
お仕事がいただけるようになり、なんとかフリーになることが出来ました。

 最低限のお金と業界の実体と経験を強引に短期間で手に入れようとする
この作戦はわりと自分勝手でかつ捨て身なのでお勧めできませんが、
自分がメインで向き合いたい業界に対して、正攻法というものが無い以上、
絶え間なく回転する現場の一ケースを体験するしかないわけです。 

(わりとこういう奴が他にもいたという事実を最近知りましたがここだけの
秘密です。)

 今にして思えば、学生時代に、きっちりお金をためて、最低限の
シッカリした製作環境を整え音楽的なスキルを身に付け、留年、落第、
中退覚悟でプロ顔負けのデモテープを作って活動すべきだったと思って
おりますが、中々そうは問屋が卸さないのが現実であり、紆余曲折も
経験のうちだと思っておくぐらいが丁度いいのかもしれません…。

(第二回目に続く…。)





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