ノベルゲーム「Collage」製作者のコミネトさんが、ゲームについて語ります。

ゲームを1つ完成させること

 ノベルゲーム「Collage」で窓の杜に取り上げられたインディ・ゲーム製作者のコミネトさんに、ゲーム制作に関する話をしていただけることになりました。


 ゲーム開発は、手段はどうあれ、1つのゲームを完成させるまでが1つの壁です。ゲーム業界に入ってくる人も、「なにか1つのものを完成させたか?」という部分が、けっこうよく見られるのです。


 1つのゲームをどのようにして考え、どのように作り、完成させたか?
 その部分に注目して見てください。


■コミネトのノベルゲームノート

第1回 『ごあいさつと、あるノベルゲーム製作者の記録』
第2回 『ノベルゲーム製作プログラムの壁』
第3回 『ストーリーメイキング』
第4回 『ストーリーメイキング2』

第5回 『ストーリーメイキング3』
第6回 『システムメイキング』
第7回 『今までにないノベルゲームを求めて1』
第8回 『今までにないノベルゲームを求めて2』


第1回 『ごあいさつと、あるノベルゲーム製作者の記録』
●はじめまして!

 はじめまして、コミネトと申します。
 アマチュアでサウンドノベルの製作などをしています。


 以前「Collage」というタイトルのゲームを作りました。
 http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ryunosuke/3968/geme.htm


 縁あって、このような雑文を書く機会を頂ました。よろしくお願いします!
 ノベルゲームを作ったことがないけど、なんか作ってみたいな〜と思っている方の、参考になればいいなと思っています。


 今回は、ノートに書いたような手記形式でお送りしたいと思います。


●サウンドノベルはスタイルである

 いまの私のサウンドノベルに対する製作信念はサウンドノベルはスタイルであるです。
 そして「システムはスタイルについてくる」と思っています。


 別にこれが真理だと主張している訳ではなく、とりあえず何でも決めておいたほうが、ブレなく作ることが出来ると思いま
す。


 また、そういう考えの人間の文章だと理解していただき、納得できないところがあった場合、読み飛ばしていただきたいと思います(笑)。


●製作動機

 突然ですが、さっき変なメモを拾ったので読んでみます。


 ある夏の蒸し暑い夜だった……。


 男は悶々としてた。


 理由はノベルゲームを作りたいけど作れないもどかしさだった。


 そう、男はプログラムが打てなかったのだ!


 それでも男はノベルゲームを作りたかった。

 それは日本語を知らないのに小説を書きたいと思うぐらい無謀な考えだった。


 しかし…。


 それはあながち不可能ではなかったのだ!

 男はある裏情報を手に入れていた。


 それは……。


 『ノベルゲームを作りたいならそれ専用のツールを使えばいい』



 なるほど! 男は早速いくつかのツールをダウンロードして
試してみた。

 男は思った。「いろいろとあるものだな、たしかにこれなら
俺にも何とか作れそうだ」


 いろいろ調べているうちにいくつかのことが分かってきた。

 つまりは簡単なツール(マウスのみで使えるツール)では簡
単な事、複雑なことをしようとすると、難しいツール(スクリ
プトツール)が必要であるということだ。


 そこで男は簡単なツールを使って何かを作ることに決めた。道が二つあるならより簡単な方を選ぶ、それが男のダンディズムだった。


 しかしここである大変なことに男は気づいた。何を作るかをまったく考えてなかったのだ!


●まず何をやるべきなのか?

 ノベルゲームといえばやっぱシナリオだ! 

 男は早速エデターを開いて書き始めた。しかしさっぱり何も書けなかった。

 当たり前である、男はシナリオなど書いたことがなかったのだ。


 男はノベルゲーム製作を断念した。

頭の中にあるうちは、すべてが名作である……


●とにかく作れそうなところから作ろう!

 そうこうしているうちに季節は秋になっていた。

 北風が男のぽっかり空いた心の穴を通り過ぎた。

 まるで甲子園に出られなかった元高校球児の気分だった。

 いったんはあきらめたノベルゲーム製作をあきらめ切れなかっがのだ!

 男はむなしくモニターを眺めていた。


 そのとき誰かが男の肩を誰かがポンと叩いた。男は振り返った。


 するとそこにはなんと!


 知らないおっさんがいた。

 知らないおっさんは言った。「シナリオが作れないならとりあえずシステム関係を設計してはどうだい」


 そうか! 


 作れるところからやればいいんだ!


 俺は早速、マシンを起動させた。そしておっさんに言った。
「どうでもいいけど、勝手に人の家に上がりこまないでよ!」


●なんか新しい物を作りたい

 男は思った。せっかく作るのならなにか新しいものをつくろうではないか。

 とは言ってもいったいぜんたいどんなノベルゲームを作ろうかなどというアイデアなどもってはいなかった。

 そんなこんなでネットサーフィンをしていて、フラッシュ系のサイトを見ていたときに彼はひらめいた。

 ノベルゲームに「ポップデザイン」を盛り込もう!

 「これはうける!」

 男のテンションは最高潮になった。

 「よーし、このフラッシュサイトをパク…参考にしてノベルゲームをつくるぞ!」


 そして彼にはどうしてもやりたいことがもう1つあった。

 それはスペアナ(スペクトラム アナライザ:データを波形で表す表現)を付けることだった。

 「こりゃーかっこよくなるぞ〜!」

 男は一人でほくそえんだ。

 しかしスペアナというのは素人が簡単に作れるものではなかった。

 だが男はたいして悩まなかった。

 アニメーションでいいや!


 しかし、この段階で使用ツールの再考に迫られた。
 デザインの自由が利くこと。そしてアニメーションを使える。

 これを実現するには、よる高機能なツールに乗り換える必要があることが分かったからだ。

 男は悩んだ。一行もプログラムを打ったことのないない人間にとってスクリプトを打つというのは未知の体験だったのだ。

 しかし三日悩んで決断した。「よしやろう!」


●ツールの選択

 ではツールは何を使うか、それが問題だった。いくつかの候補から男が選んだのは吉里吉里2/KAG3(以下吉里吉里と略す)というツールだった。

 理由は一番高機能そうだったからだ。

 男は使いもしないのに2400dpiのスキャナーを買ったりしたと、高性能という言葉に弱かった。その短絡さで何度も人生を誤ってきた。

 しかしこの吉里吉里の選択は彼にとって人生最良の選択になるとあとで思い知ることになる。


 男は早速吉里吉里を起動させた。

 男は思った。「基本動作は吉里吉里がやってくれるのか、親父が熱中する訳だ」

 そんなこんなで二週間ほどで何とか使い方を覚えた。


●デザインについての気づき

 男はまずデザインを考えることから始めた。

 それまでデザインの勉強などしたことのない彼は、とりあえず図書館でそれっぽい本を借りてきた。

 とはいってもそんなに簡単に作れるものではなかった。

 イメージには写真を使うこを決めた。問題はそれをどうやって配置するかだった。

 その段階では男にとってデザインはあくまで飾り程度の位置づけだった。


 しかし……ある日転換点がやってきた。


 不意に写真を画面の中央に横長に配置してみたのだ。


 「かっこいい! これでいい!」


 男の背筋に電流が走った。

 これほどデザインと写真というものが位置を変えただけでマッチングするとは思わなかった。

 相乗効果とはまさにこのことだ! と男は悟った。


●演出効果の作成

 スペアナ、選択肢出現の演出、画面転換の演出、これらの製
作は男の技量では相当の苦労を強いられた。

 スペアナをアニメーションで、1コマ1コマ、マウスで描いていった

 そしてそれが完成したときに男は気づいた、吉里吉里には
拡張機能で、スペアナが標準でついていたのだ!

 男は事前に調べるということを知らなかった。

 まあ、このスペアナは予想以上に好評だったので男は満足だ
った。


 ここらへんでやっと吉里吉里2の高機能の恩恵に男は気づい
た。


●音楽を探して

 男はスクリプト製作と平行して音楽を探すことにした。

 音楽に関してもフラッシュサイトに習って、ループサウンドを使うことにした。

 どっか適当に調べれ、かっこよくて、種類が豊富にある。ループサウンドを配布しているサイトを見つけよ〜。

 男はノー天気にそんなことを思っていた。


 しかしこのループサウンド探しは予想以上に大変だった。

 いくつかのサイトの音楽を試してみたが、どうも納得が行かなかったのだ。

 しかし男はあきらめなかった。するとすごいループサウンド
を配布しているサイトを発見したのだ。


 男は感動のあまり、しらないおっさんと抱き合った。


 男は気がついた。「そうか、納得が行かないということは、自分の求めるレベルが高いということだ! つまり納得が行ったとき、すごくいい物ができあがるんだ!」


 男はここの音楽しかないと使用を決定した。


●シナリオ&システム考案

 男は当初、探偵物、犯罪物みたいなものを考えてた。しかしそんな知識はなかったので恋愛ものっぽいのにした。

 そのほうがうけるのではないかという下心があった。


 安直だった・・・。


 そして二週間ぐらいでさらっとかこうかな〜と書き始めて三ヵ月後に完成した。

 実は男にとって、この部分は納得の行かない部分になってしまった。
 まあしかし、それは後に生かされることになるだろう。


●シナリオをスクリプトに投入

 いよいよシナリオを投入だ。

 作っておいたマクロ(命令の集合体)化した演出関係をチマチマとシナリオに書き込んでいった。

 男はここらへんであることに気づいた。


 俺ってこういうの結構好きかも!


 男はチマチマ打ち込んで、何度も調整を繰り返すような作業が結構好きだということに気がついた!


 男は思った。「にんげんってどこに才能があるがわかんないものだな〜」


 しかしここであることに悩まされた。バグだ!

 こいつの退治にはハイレベルなスキルが必要だった。

 男は叫んだ。「くそ〜ジオンのバグめ〜」

 しかし男のバグのほとんどは単なる打ち間違だった


 ここまでくるとほとんど単純作業だった。ゴールは見えていた。男はがむしゃらにまいしんした。
 即興ジャズピアニストのようにキーボードを打ち鳴らした。


 そして終わった。大変だった。半年ぐらいはやってただろうか……実際には二週間ぐらいの作業だった。


●いよいよ公開

 えーと、コントはここで終わります。


 まず素材を借りたサイト様に挨拶のメール、書き込みを行いました。


 そしてにかく早く公開したいと思っていましたのでろくにチェックもせずに公開しました。
 まあ、誤字とかあれば後で直せばいいやと思っていました。
 それにしてもあんなに誤字があるとは思いませんでしたね〜。


 ちらほらと感想のメールとかも来たりしてうれしかったですね〜。


 それから訳あってて二週間ほどネットにつなげなかったのですが…。


 久しぶりにメールをチェックすると!
 なんと、大量のメールが来ていました!


 それは実は感想のメールだったのですが、何でこんなに? と思って調べると、窓の杜に記事が載っていたんですね!

 いや〜これには驚きました。

窓の杜 - Collage
http://www.forest.impress.co.jp/lib/game/advrpg/adv/collage.html


●このゲーム制作経験から得た教訓

 私がこのゲーム制作で得た教訓は、

「とにかく作れるところから作る! 作ってみる!」

これです。

(続く)
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