ノベルゲーム「Collage」製作者のコミネトさんが、ゲームについて語ります。

■コミネトのノベルゲームノート

第1回 『ごあいさつと、あるノベルゲーム製作者の記録』
第2回 『ノベルゲーム製作プログラムの壁』
第3回 『ストーリーメイキング』
第4回 『ストーリーメイキング2』

第5回 『ストーリーメイキング3』
第6回 『システムメイキング』
第7回 『今までにないノベルゲームを求めて1』
第8回 『今までにないノベルゲームを求めて2』

第5回 『ストーリー・メイキング3』
実はまだ説明していなかった物語に大切な要素があります。

それはどんでん返しです。

ここではこのどんでん返しについて説明してみたいと思います。


●どんでん返し

どんでん返しとは簡単に言うとこうです。

敵は A だと思ったら B だった。

つまりというのはいかにも敵っぽいけど敵ではない奴です。逆にはとても悪い奴には見えないけど実は敵だったという奴です。

Aは囮の敵、Bが本当の敵、となります。

では前回作ったあらすじにこのどんでん返しを投入してみたいと思います。

まずは囮の敵と本当の敵を設定します。

以前のあらすじの敵はメインコンピューターです。ではこいつはどうしましょう、囮の敵にしましょうか、本当の敵にしましょうか。ロボットの反乱という話でのメインコンピューターとなればいかにも敵っぽいのでこれはあえて敵にはしません。囮の敵とします。

では別に本当の敵を設定する必要があります。ではそれを踏まえたあらすじを書いてみます。

太郎は博士を発見する。

博士はロボットに脳を手術されて自分の意思では話せなくなっていた。しかしあるきっかけで一瞬だけ自我を回復した。

博士はメインコンピューターが反乱を起こしたことを告げる。そしてそれをを破壊する方法を太郎に伝えて息を引き取った。

太郎はメインコンピューターを破壊することを決意する。

太郎はメインコンピューターを追い詰めた。しかし反乱を起こしたのはメインコンピューターではなかったことが分かる。

そこに博士が現れる。博士は死んではいなかったのだ!

本当の敵はメインコンピューターではなく博士だったのだ! メインコンピューターは実は反乱をやめさせようとしていたのだ。博士は自分を警戒しているメインコンピューターを破壊させるために太郎に嘘をついて破壊させよとしたのだ。

博士と太郎は対決する。そして太郎は博士を倒した。

協力者と設定していた博士を敵にしてみました。

つまり敵はメインコンピューターだったと思ったら博士だった、ということになります。

いや〜驚きの展開です。

なぜ博士は悪の道に足を突っ込んでしまったのでしょう、その動機について考えて見ましょう。

■トピックス
動機を説明するために参考になるものを紹介しておきます

     マズロー(心理学者 1908〜1970 アメリカ)
      Maslow, Abraham H.


●欲求階層説
  マズローは人間の欲求を5段階に分類。
  人間は低次の欲求が満たされると、
  高次の欲求を満たすように動機づけられているとした。


 1.生理的欲求 食欲、睡眠欲、排泄欲など生存に関わる基本的欲求
 2.安全・安定の欲求 安全、住居、衣服など
 3.社会的欲求 集団に属したり、仲間に受け入れられたりすること
 4.自我・自尊の欲求 尊敬されたい、名声を得たいなど
 5.自己実現の欲求 自己の能力を発揮して目標を達成すること
 6.自己超越の欲求 現状の自分の限界を超える
(注) 6.自己超越の欲求はオリジナルには存在しません。

ではこれらを参考に敵である博士の動機を考えてみようと思います。

まずは博士の性格を設定してみましょう、ギャップ感のインパクト、そして本当の敵だと気づかせないために、非常に人望の厚い人物であると設定してみます。

では、そんな博士がなぜ、悪の心を持ってしまったのか?何かきっかけがあったほうがいいです。

こういうのはどうでしょう、

博士は家族を強盗に殺され亡くしていたのだ。それ以来人が変わったように落ち込んでしまった。

人格が変わるには十分な動機でしょうね。しかしながらまだ弱い気がします。

しかしながら、ここでもう一工夫します。こうです。さらに逆転を加えます。

しかし家族の死は強盗犯の仕業ではなかったのだ。家族を殺したのは博士だったのだ!

ショッキングな展開ですね、なぜこんなことになったのでしょうか?続けます。

博士は自分の開発した電子ディバイスを自分の脳に移植していたのだ。

記憶力が減退していたことを悩んでいた博士はこれで解決できるのではと考えた。

効果は著しかった。博士は超人的な頭脳を手に入れた。気を良くした博士はその後も手術を繰り返した。

たしかに博士の頭脳は優れていったが、じつは移植したディバイスの中に不良品が混ざっていたのだ。それが博士の人格を奪っていった。

そしてついに、博士の脳からひそかにチップを取り出そうとした家族を手にかけたのだった。

そして博士は自分こそ神である自己超越の欲求と考えるようになった。そしてロボットたちを操って、愚かな人間を滅ぼそうと考えたのだ。

いや〜怖い話です。

博士の動機がちょっと短絡かなと思うのでこのようにエピソードを追加してみてました。

博士が自分の脳に電子ディバイスを埋め込んだのは、不治の病の娘を救う手段を見つけるために、脳の機能アップを図ったのだ。

ちょっと物悲しくなりました。

この博士の娘にはなにかひとエピソードほしい所です。

どんでん返しは強力な機能です。を投入することによってかなり展開が劇的になります。

■お勧めサイト
実のところ、これらの発想はあらすじ.comというサイトの受け売りでなのです。

こちらのサイトはどんでん返しという仕掛けにこだわって、物語を簡単に作るためのノウハウを提供されています。どのような段取りを踏めば面白い物語を作れるかを抽象論を排して具体的に解説されています。また物語を自動で作成するという前代未聞のソフトを開発販売されています。

特に物語を大量に生産しなければならないノベルゲーム製作者にとっては強力な武器となるでしょう。お勧めです。




●暗喩

暗喩というのはかっこよく言うとレトリックです。これを使うと話になんとなく高級感が出るので使ってみましょう。

たとえば割れたコップです。まあ、とりあえず見てください。

男はある戦いに挑んでいる真っ最中、とても勝てる相手ではないことは分かっていた。それでも守るもののために戦っている。

一方彼の家族の家

妻が彼の愛用のコップを大切に洗っていた。しかしそれにも関わらすそのコップはヒビが入って割れてしまった。妻は不安げに上を見上げた。

この場合コップは男、割れるは死を意味します。つまり男は死んでしまったことを暗に示しているわけです。

この後に実際に男が死んだ絵を入れるか、あるいはそのまま暗喩だけにしておくかはお好みです、とてもしみじみとした読後感を与えることが出来ると思います。

ではこれをあらすじ投入してみたいと思います。

まずは暗喩を仕掛ける人物を決定します。博士の娘にしましょう。博士の娘は物語最後によみがえらせることにします。つまりよみがえりの暗喩を考えます。

ではそれらを追加したあらすじの箇条書きを書いてみたいと思います。

ついでなのでツンデレと能力の逆転も追加します。

追加部分の色分けの意味は以下の通りです。
●どんでん返しのための変更部分
★ツンデレ

◆能力の逆転

▼よみがえりの暗喩

■その他の追加部分

それでは書いてみます。

■太郎は警視庁捜査科の新米刑事だった。圭子は太郎の先輩だった
○太郎と圭子は行方不明になった博士の捜査のためにロボット研究施設を訪れた
★太郎は圭子にひそかに恋心を抱いていた
★しかし圭子はいつも太郎をしかってばかりだった

◆太郎にはある能力があった、それはコンピュータープログラムだった
◆太郎はあるシステムを超効率的に稼動させるアルゴリズムを独自に考案していた
◆しかし圭子はその太郎のことをオタクと馬鹿にしていた

○二人は物まねロボットを見て技術の高さに感心した
○二人をかわいいコンパニオンロボットが案内してくれた
●博士部屋で同僚に博士のことを聞く
●博士は天才的な科学者である
●博士には妻を強盗に殺された過去があった
●博士の娘はある病気でここ何年も昏睡状態である
▼博士は動かない時計をいつも持ち歩いていた
▼それは娘の誕生日に渡そうと博士が買っていたものだ
▼しかし娘が倒れた日に動かなくなったとのこと

◆博士のコンピューターではあるプログラムが稼動していた
◆それは娘の病気を治す薬の調合をシュミレートするプログラムだとのこと
◆しかし何年も稼動しているがいまだに結果が出ていないとのこと
◆太郎はそのプログラムを自分のアルゴリズムで作動させたいと思う
◆太郎はひそかにそのプログラムを自分のパソコンにダウンロードし、改造した

○突然ある事件が起きた
○太郎と圭子はロボット研究施設に閉じ込められていた
○ロボットたちが襲ってくる
○二人はロボットを倒し、その場から脱出する必要がある
○幾多の困難が二人を待ち受ける
○何とかロボットから逃げ出す
○博士を発見する
○しかし博士を脳を改造され自我を失っていた
○あるきっかけで博士は自我を取り戻す
○博士から、夜明けまでにメインコンピューターを破壊する必要があること知る
○太陽電池が稼動して、殺戮ロボットに電気が供給されてしまうのだ
○二人はメインコンピューターを破壊することを決意する
○あのかわいいコンパニオンロボットと出会う
○突然そのロボットが襲い掛かってくる
○圭子は自分を犠牲にして太郎を守った
○圭子は足を負傷した
○太郎は一人で中央コンピューターに向かうことになった
○そのあいだ、圭子はある場所で隠れて帰りを待つことになった
★別れ際に圭子がつらく当たって悪かったと言った
★実は圭子は太郎に好意を持っていた
★しかしそのことを同僚にからかわれてそれを隠すためにつらく当たっていたのだ
★太郎と圭子はキスをした

●太郎はメインコンピューターを倒しに立ち上がる

○太郎を執拗に追う一台のロボットががいた
○そいつは人間に成りすますことが出来る物まねロボットだったのだ!
○そいつはある人物に化けて太郎騙そうとする
○寸でのところでその嘘に気が付き難を逃れる
●メインコンピューターを発見、対峙する
●しかしメインコンピューターが反乱を起こした訳ではないと判る
●するとそこに博士が現れる
●博士は死んでいなかった!
●本当の敵は博士だったのだ
●実はメインコンピューターは反乱を防ごうと奮闘していたのだ
●メインコンピューターは博士を警戒して近づけさせなかった
●そこで太郎を騙して破壊させようとしたのだ
●博士の口から妻を殺したのは自分であることが語られる
●博士は娘の病気を治すために自ら脳を改造をしたのだ
●それを妻が密かにに元に戻そうとしたので殺したのだとのこと
●そして強盗が殺したように装った
●博士は語る自分は神になるのだと
●主人公は本当の敵、博士と対決する
●しかし博士は体を改造していてとてもかなう相手ではなかった
◆その時太郎の持っていたパソコンが大きな音を立てた
◆あのプログラムが博士の娘の病気を治す薬の調合を発見したのだ
◆太郎は博士に娘がこれで助かると言った

●博士は今度は本当に自我を取り戻した
▼博士はこれを娘に渡してくれと言った
▼太郎は博士から動かない時計を受け取った

●博士は太郎に逃げ道を教え、自殺した
●メインコンピューターは被害を防ぐため、夜明け直前に自爆をすると告げる
●夜明けまでに脱出する必要がある、時間がない

○太郎は圭子の元に戻ってくる
○二人は無事、脱出することが出来た
○すると突然圭子が太郎の首を絞め始める
○彼女は圭子ではなかった、物まねロボットっとだったのだ。
○物まねロボットがどこかで圭子とすり替わったのだ
○太郎は何とか物まねロボットから逃れた
○ロボットは逃げ去ってしまった
○圭子はまだ施設の中に取り残されている
○太郎は圭子を探して再び施設の中に
○しかしながら圭子は生きているかどうかも分からない
○圭子を探すがなかなか見つからない
○早くしないとタイムリミットが来てしまう
○やっと圭子を見つける
○太郎と圭子が施設の出口に向かう
○しかし出口付近でさっきの物まねロボットと遭遇する
○物まねロボットは圭子に襲い掛かり揉み合いになる
○そのうちどっちが本物か分からなくなる
○二人の圭子はお互いに自分が本物だと証言する
○太郎は悩む
○そして一人を本物だと決めてもう一人を倒そうとする
○その瞬間、あるきっかけで実はもう一人の方が本物であると分かる
○物まねロボットを倒す
○太郎と圭子が施設から脱出する
■エピローグ
▼博士の娘に完成した薬を投与すると彼女は目を覚ました
▼太郎は博士から受け取った時計を娘に渡した
▼止まっていた時計は動き出していた

○END

だいぶ出来てきました、矛盾する部分もあるかもしれませんが伏線を上手く張ればよくなるとおもいます。


(続く)
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