ノベルゲーム「Collage」製作者のコミネトさんが、ゲームについて語ります。

■コミネトのノベルゲームノート

第1回 『ごあいさつと、あるノベルゲーム製作者の記録』
第2回 『ノベルゲーム製作プログラムの壁』
第3回 『ストーリーメイキング』
第4回 『ストーリーメイキング2』

第5回 『ストーリーメイキング3』
第6回 『システムメイキング』
第7回 『今までにないノベルゲームを求めて1』
第8回 『今までにないノベルゲームを求めて2』

第8回 『今までにないシステムを求めて2』

何をもってプレーヤーを引き付けるか?



プレーヤーをゲームに引き付けるために、どのような仕掛けを用意すればいいかについて考えてみました。大体三つぐらいの仕掛けを柱に出来るのではないかと思いつきました。

一つはスリル、二つ目はドラマ、三つ目はミステリーです。

スリルは前回までに説明したような、トラップなどの困難があり、それをキャラクターがプレーヤーから渡されたアイテムによって乗り越えるという部分です。まさにゲームの部分ですね。

では、二番目のドラマについて考えてみたいと思います。


人間ドラマ


ドラマといいますと、普通はキャラクター同士が葛藤を繰り広げるなどのいわゆる人間ドラマを思い起こすと思います。

もちろんそういうドラマもあったほうが良いとは思いますが、ここではもう一つ、別のドラマの見せ方をギミックとして取り入れたいと思っています。

このゲームは前回書いたように、プレーヤーがゲームを現実だと誤認識してしまうような状況を作ることが目的ですから、当然時間もリアルタイムに進行します。

となるとある技術的な問題が起きます。イベントとイベントの間に隙時間が出来てしまうことです。つまりトラップを乗り越えた後にすぐに次のトラップが、となると少し展開が都合よすぎますし、キャラクター達も休息を取らないとリアリティーが出てきません。

しかし、本当にそのまま、ダラーと休んでしまってはプレーヤーは飽きてしまいす。そこで、その間にドラマを挿入して行って見てはと思うわけです。

前回ちょっと書きましたが、このゲームでは、ゲーム内のキャラクターが常にモニターに座っているプレーヤーを意識しているのです。そして、キャラクター達は、自分達が監視カメラの向こうのプレーヤーの興味を引き付け続けないと、新しいアイテムをもらえないことを理解しています。

では、キャラクター達がプレーヤーの興味を引くために何をすればいいと考えるでしょう。彼らはいろいろ考えますが、なにか面白い話をするのがいいという結論に達します。

ドラマとはつまり、キャラクター達自身が語る、個人的なドラマということになる訳です。

キャラクター達は、取り決めて、順番に自分の個人的な生い立ちの話をします。もちろん面白い生い立ちのドラマを用意しておきます。普通っぽい人物が意外にすごい人生を送ってきたなどがあると面白いでしょう。

ようは千夜一夜物語のようなことをやりたいわけです。

また、こうやって語られた彼らの話が、どのキャラクターにどのアイテムを渡せばいいかというヒントになるというような仕掛けがあったりしてもおもしろいでしょう。


アイテムを渡さないという選択


ちょっと前回のゲームのシステムの話に戻ります。

このゲームにおいてのプレーヤーの能動的な行動は、どのキャラクターにどのアイテムを渡すか、といった部分です。

前回アイテムを渡さないという選択もできるという設定が重要な意味を持つといったことを書いたと思いますが、これはどういうことかといいますと。人間誰でも慣れてくるとだんだんそれが当たり前だと思うようになって来ると思います。

つまり毎回毎回キャラクター達にアイテムを与えていると、だんだんそれが当たり前だとキャラクター達も思ってくるわけです。そしてプレーヤーに対する意識も薄れてきます。

そこでアイテムを渡さないという選択をすることによって、彼らに緊張感を与えることが出来ると、おもしろいんじゃないかと思うのです。

アイテムをもらえなかったキャラクター達は自分達がプレーヤーから見捨てられたのではないかと思い混乱し、プレーヤーに懇願するかもしれません、あるいは恨み言をキャラクターがいるかも知れませんし、あるいは仲間割れをして、キャラクター同士が殺し合いが始まってしまうかもしれません。あるいは逆に結束力を強くするかもしれません。

わざと窮地に追い込むことによって、キャラクター達にプレーヤーの存在を強く意識させることが出来る、あるいはそのような展開の末路を見ることが出来るというのも面白いのではないかと思います。


時間の設定


度々述べますが、このゲームでやりたいことは、モニターの中の出来事が、もしかしたら現実ではないかと錯覚させることです、しかしゲームであるが故にどうしても避けられない問題について考えてみたいとおもいます。

それはゲームオーバーです。

普通、ゲームオーバーになると、またはじめからやり直すということになると思いますが、ゲームオーバーとはすなわちキャラクターの死です。

つまりそれだと死んだキャラクターがまた生き返って再びプレーをはじめるとい現象が起こったということになってしまいます。

このゲームは再三述べますがプレーヤーがゲームを現実だと誤認識してしまうような状況を作ることが目的ですから、このようなことはまずいということになります。

また、セーブ、ロード機能も、これは一時的に時間を止めることが出来るということになりますから、せっかくリアルタイムで進行するゲームを作っても雰囲気ぶち壊しということになるでしょう。かと行ってセーブが出来ないなどとするわけにもいきません。

これに違和感を持たせないためには、やはりSF的な設定が必要になってくると思います。

と、言うことでこのような設定を付け加えてみます。このゲームを主催している組織は時空を操作できる。時間を過去に戻すことが出来る。

ちょっと突拍子がなくてあれですが、これ以外に矛盾を解消できる方法が見当たりませんので仕方がありません。で、この設定を利用したストーリー上のギミックを考えてみたいと思います。


逆因果律


因果律というのは原因があり結果がある、仏教的に言うなら、因果応報という言葉がありますが、良い行いをすればいいことが帰ってくる、その逆も然りといった考え方です。

ノベルゲームのこの考え方を実践したゲームといえると思います。つまり選択肢が因で、その結果としての分岐、果を観察するゲームと言えると思います。

では逆というのは何かといいますと、そのものずばり、結果が先にあり、その後に原因が作られるということです。

もちろん現実にはこんなことは起こりえませんが、それをゲームとして実現してみれば面白いのではないかと思うのです。

どういうことかといいますと、先の章でキャラクター達が個人的な生い立ちについて語るというギミックについて書きましたが、これはすなわち過去のドラマです。

そして、現在はまさに危機に瀕していて死ぬかも知れない状況です。キャラクター達が死ぬか生き残るかはプレーヤーの選択に懸かっている訳で、キャラクターは生き残る可能性もあれば死ぬ可能性もあるわけです。キャラクターからすればそれはほとんど運に支配されています。

つまりこのゲームで死ぬか生き残るかが果ということになります。因果応報の法則に従うなら、このゲームで死んだ人間は、それを宿命付けられるような生き方をして来たということになります。つまり、過去において何か悪いことをしてきたということになります。そして死に方が悲惨であればあるほど、過去の出来事が悪いということになります。

このゲーム内においてキャラクター達が語る人生はあくまで断片的なものですし、あるいはキャラクター自身による意図的な改変が行われていることも十分あるわけです。

そしてキャラクターが死んだ時点で、何らかの方法で、そのキャラクターが過去の行いがすべて暴露される。死に方に相応しい人生を送ってきたことがわかるという仕掛けを作っておく訳です。

つまり、キャラクターの死という結果を決めることによって、過去のそのキャラクターの人生の選択が変わってくるという、果を決定して、そのキャラクターの人生の分岐点の選択を観察するという、これまでのノベルゲームとはまったく逆のゲームシステムを作れるのではないでしょうか。これはなかなか新しいと思います。


なぜプレーヤーはプレーヤーなのかの設定


おそらくプレーヤーはなぜ、このキャラクター達はこんなところに監禁されているのだろうか? いったいこのゲームを主催しているのは何の組織で何が目的なんだろう? などの疑問が出てくると思います。あるいはそういう風にしたいわけですが。

どんな組織だとか、何が目的だとかという謎解きは難しくて、いろいろ凝った設定を作っても、ああ凝った設定だねぐらいで終わってしまうとおもいます。なのでそのような謎解きはあえてしません

ただやはり、何らかのインパクトを残して、プレーヤーにゲームを終えていただきたいと思います。

先にも述べましたが、このゲームの目的は、プレーヤーに一瞬でも、もしかしたらゲーム内の出来事が現実なのではないかと錯覚させるということを、目的としています。

なぜこのゲームが始まったのか、そしてプレーヤーがなぜゲームをしているのか。がそのことを明かすわけです。そのためにあるミステリー的な仕掛けを講じたいと思います。

ゲーム終盤、生き残ったキャラクター達は、なぜ自分たちがこんなことに巻き込まれたのかと話し合います。

そして全員にある共通点があることを発見します。

それはあるゲームを手に取ったけど、それを購入しなかったという事実です。

そう、つまり、そのゲームこそ、このゲームなのです。

つまり、プレーヤーはゲームを購入したおかげで、監禁されずに済んだというわけです。

もしかしたら、プレーヤー自身が、このゲームの中のキャラクターとして、このゲームに参加させられたかもしれない、この設定によって、ほんの一瞬でも、プレーヤーに冷や汗をかかせることが出来ないだろうか、と思うわけです。


最後に


ということで、このコミネトのノベルゲームノートは今回が最終回となります。

ノベルゲームを作っている方の役に立つような情報を提供したいと思って書き始めたのですが、どうにもこうにも話がまとまらなくて、結局書きたいことを書き散らして終わってしまいました。私はとても楽しめましたが(笑)

読んでくださった方ありがとうございます。ゲーム作りがんばりましょう! 私もこっそりやってます!



(おしまい)
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